家を解体する前に、アスベスト(石綿)が使われていないかを調べることが法律で義務になっています。「うちは古い家じゃないから関係ない」とはいきません。建てられた年に関係なく、すべての解体工事が対象です。
この調査は解体業者(元請)の義務ですが、費用は見積もりに乗ってきます。何がどこまで義務なのかを知らないと、見積書の「石綿調査費」が妥当なのか、そもそも入っているのかが分かりません。ここでは国の資料で確かめた内容だけをまとめます。
いつから何が義務になったか
| 時期 | 義務になったこと |
|---|---|
| 2021年4月 | 工事対象のすべての材料について事前調査(設計図書などの書類と目視で確認)。結果の記録を3年間保存し、作業場所に備え付けて現場に掲示する |
| 2022年4月 | 一定規模以上の工事は、調査結果を電子システムで届け出る(労働基準監督署と自治体へ) |
| 2023年10月 | 建築物の調査は「建築物石綿含有建材調査者」など、国が定める講習を修了した人でなければ行えない |
| 2026年1月 | 工作物(塀・煙突など)の調査も有資格者が行う |
つまりいまは「資格を持った人が調べ、記録を残し、現場に掲示する」ところまでがワンセットです。
届出が要るのは「解体80平方メートル以上」
調査そのものはすべての工事で義務ですが、結果の届出が要るのは規模の大きい工事です。
- 解体工事:解体する部分の延べ床面積が80平方メートル以上
- 改修工事:請負金額が100万円以上
80平方メートルは約24坪です。一般的な戸建ての解体は、ほぼこれに当てはまります。なお建設リサイクル法の届出も80平方メートルが境目で、こちらは施主(発注者)の義務です。数字は同じですが別の制度なので、両方の手続きが要ります。
調査をするのは業者。ただし費用は施主が払う
事前調査と届出は元請の解体業者の義務で、施主がやることではありません。ただし調査にかかる費用は工事費に含まれます。見積書を見るときは、次を確かめてください。
- 「石綿事前調査」「アスベスト調査」といった項目があるか。無い場合、一式に含んでいるのか、そもそも見込んでいないのかを聞く
- 分析(検体を取って調べる)が要るかどうか。書類と目視で判断できない建材があると分析が必要になり、その分の費用が増えます
- 石綿が見つかったときにどうなるか。除去には別の手続きと費用がかかります。「見つかったら追加」とだけ書かれている見積もりは、追加の目安を聞いておく
吹き付け石綿などが見つかった場合、除去の工事は着工の14日前までに労働基準監督署へ届け出る必要があります。工期にも影響するので、早めに分かるほうが得です。
アスベスト(石綿)の資格一覧:調査ができるのはどれか
ここが分かりにくいところです。「石綿」と付く資格はいくつもありますが、事前調査ができるのは「調査者」と名の付くものだけです。石綿障害予防規則は、事前調査を「厚生労働大臣が定める者」に行わせるよう定めています(3条4項)。
| 資格 | 何ができるか |
|---|---|
| 一般建築物石綿含有建材調査者 | すべての建築物の事前調査ができる |
| 特定建築物石綿含有建材調査者 | すべての建築物の事前調査ができる。一般の講習に、実地研修や口述試験が加わる |
| 一戸建て等石綿含有建材調査者 | 一戸建て住宅と、共同住宅の住戸の内部に限って事前調査ができる(共用部分は除く) |
| 令和5年9月30日までに日本アスベスト調査診断協会に登録された者 | 建築物の事前調査ができる |
| 工作物石綿事前調査者 | 煙突・トンネルの天井板・プラットホームの上家・遮音壁などの特定の工作物の事前調査ができる(建築物の一般・特定の調査者も可) |
| 石綿作業主任者 | 石綿を取り除く作業を指揮する。技能講習の修了者から選ぶ(石綿則19条)。調査の資格ではない |
| 石綿取扱作業従事者(特別教育) | 石綿を扱う作業に就く労働者が受ける教育(石綿則27条)。調査の資格ではない |
2023年(令和5年)10月1日以降に着工する建築物の解体・改修では、上の調査者(または協会の登録者)による事前調査が必要です。戸建ての家の解体なら、一戸建て等の調査者でも調査できます。調査者の講習の修了者は276,285人(令和8年6月末時点、厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイト)です。
当サイトが292社の公式サイトを調べたときも、「石綿取扱作業従事者がいます」と書いている会社がありました。これは除去作業の教育で、事前調査はできません。ホームページに「アスベスト対応可」とあっても、調査は外部に頼んでいることがあります。見積もりのときは「事前調査は誰が、どの資格でしますか」と聞いてください。解体工事に要るほかの資格は解体工事に要る資格と講習にまとめています。
福岡の解体業者で、調査の資格者がいると確認できたのは9社
当サイトは、福岡県の解体工事業者登録名簿に載っている292社すべての公式サイトを調べました。そのうち「建築物石綿含有建材調査者が在籍している」と公式サイトで確認できたのは9社です。
石綿(アスベスト)調査の資格者が在籍の解体業者一覧から、その9社を見られます。
ただし「書いていない=いない」ではありません。小さな会社はそもそも公式サイトを持っていないことが多く(292社中、サイトがあったのは63社)、あっても資格のことまでは書いていません。調査を自社でやるのか、外部に頼むのかは、見積もりのときに聞くのがいちばん確実です。どちらでも法律上は問題ありません。
見積もりのときに聞くこと
- 事前調査は御社でされますか、外部の調査会社ですか
- 調査の費用は見積もりに入っていますか
- 分析が必要になったら、いくらくらい増えますか
- 石綿が見つかった場合、工期はどれくらい延びますか
この4つを同じように聞いて、答えを並べれば業者の差が見えます。福岡県の解体業者一覧は登録番号つきで載せているので、そこから複数社に同じ条件で聞いてください。
近所で解体工事が始まって石綿が心配なときは、現場に掲示された調査結果を見てください。騒音・振動も含めて隣の解体工事がうるさい・揺れるときの基準と相談先にまとめました。
アスベストの調査・除去の補助金(福岡市・北九州市)が解体に使えるかは、アスベストの補助金は解体に使える?にまとめています(両市とも、解体を予定している建物は対象外です)。
出どころ:厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」(改正石綿則のポイント、工事の元請業者のみなさまへ)。当サイトが2026年9月24日に確認しました。掲載業者の資格の有無は、当サイトが2026年9月に292社の公式サイトを1社ずつ調べた結果です。資格の一覧は、石綿障害予防規則 第3条・第19条・第27条(e-Gov 法令検索)と、同ポータルサイトの「建築物石綿含有建材調査者講習」「工作物石綿事前調査者」のページ(2026年10月2日確認)によります。