解体の見積書や契約書は、業者ごとに書式がばらばらです。ただし「書面に書かなければならない」と法律で決まっている項目があります。そこを見れば、何社かの見積もりを同じ物差しで比べられ、あとで揉めにくくなります。建設業法・建設リサイクル法・大気汚染防止法の条文を確かめて、施主が受け取るべき書類を順に並べます。
まとめ:受け取る書類と、書いてあるべきこと
| いつ | 書類 | 書いてあるべきこと | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 見積もり | 見積書 | 工事の種別ごとの材料費・労務費などの内訳、工程ごとの日数 | 建設業法20条(許可業者) |
| 契約の前 | 石綿(アスベスト)の事前調査の結果 | 調査の結果。石綿があれば、種類・場所・面積・作業の方法と期間 | 大気汚染防止法18条の15 |
| 契約の前 (80㎡以上) |
届出事項の説明書 | 建物の構造、工事の着手時期と工程、分別解体の計画など | 建設リサイクル法12条 |
| 契約 | 工事請負契約書 | 工事内容、請負代金、着手と完成の時期、支払いの時期と方法、第三者への損害の負担など | 建設業法19条 |
| 契約 (80㎡以上) |
同じ契約書に追加 | 分別解体の方法、解体工事の費用、再資源化の施設の名称と所在地、再資源化の費用 | 建設リサイクル法13条 |
| 工事のあと (80㎡以上) |
再資源化等の完了報告 | 完了した年月日、施設の名称と所在地、かかった費用 | 建設リサイクル法18条 |
「80㎡以上」は、建設リサイクル法の対象になる解体工事(床面積の合計80㎡以上)の場合です。約24坪なので、一般的な戸建ての解体はほぼ当てはまります(→ 建設リサイクル法の届出)。
見積書:「解体工事一式」だけなら内訳を頼む
建設業法20条1項は、建設業者に、工事の種別ごとの材料費・労務費などの経費の内訳と、工程ごとの作業に必要な日数を書いた見積書を作るよう努めることを求めています。さらに同条4項で、注文者から請求があれば、契約が成立するまでにその見積書を交付しなければならないとしています。
ここでいう「建設業者」は、建設業許可を持つ業者のことです。解体工事業の登録だけで営業している業者(500万円未満の工事)にはこの条文はかかりませんが、内訳を出してもらうのは同じくらい大事です。「一式」としか書いていない見積書では、どこで差がついているのか比べられません。
解体の見積書によく並ぶ項目は次のとおりです(項目名は業者によって違います)。
- 仮設工事:足場、養生シート、防音パネル
- 解体工事(本体):建物の取り壊し。木造・鉄骨造・RC造で手間が違う
- 廃材の運搬・処分:木くず・コンクリートがら・金属くずなどを分けて運び、処分する費用
- 付帯工事:ブロック塀、カーポート、庭木、物置、浄化槽など
- 残置物の処分:家に残った家財道具
- 整地:更地にならす
- 石綿の事前調査(石綿があれば除去費用も)
- 諸経費:届出の代行、近隣へのあいさつ、現場管理など
項目ごとの中身は解体工事の流れにもまとめています。何社かに頼むときは、延べ床面積・構造・付帯物・残置物の有無を同じ条件で伝えると、見積もりが比べやすくなります。
石綿(アスベスト):調査結果を書面で説明してもらう
大気汚染防止法18条の15は、解体工事を請け負った元請業者に、工事の前に石綿の有無を調べ、その結果を書いた書面を発注者に渡して説明することを義務づけています。石綿があれば、使われている建材の種類・場所・面積、作業の種類・期間・方法も書面に入ります。
同じ条の2項は、発注者(施主)はその調査の費用を適正に負担する、としています。見積書に調査費が入っていないときは、どう扱うのかを聞いておいてください(→ 解体前のアスベスト調査は義務)。
契約書:口約束で始めない
建設業法19条1項は、建設工事の請負契約の当事者に、契約を結ぶときに決まった事項を書面に書き、署名か記名押印をして互いに渡すことを求めています。解体で特に見ておきたいのは次の項目です。
- 工事内容(どこまで壊すか。基礎・ブロック塀・庭木を含むか)
- 請負代金の額
- 工事に着手する時期と、完成する時期
- 前払い・中間払いがあるなら、その時期と方法
- 工事で第三者が損害を受けたときの賠償金の負担(隣家の外壁や車を傷つけた場合など)
- 完成を確かめる検査の時期と方法、引渡しの時期
- 完成後の代金の支払いの時期と方法
- 遅れたときの遅延利息・違約金、紛争の解決方法
この条文は許可業者か登録業者かに関係なく、建設工事の請負契約の当事者にかかります。契約内容を変えるときも、同じく書面が必要です(同条2項)。
80㎡以上の解体は、契約書に「解体の費用」と「再資源化の費用」を分けて書く
建設リサイクル法13条と、それを受けた省令(特定建設資材に係る分別解体等に関する省令7条)は、80㎡以上の解体工事の契約書に、建設業法の項目に加えて次の4つを書くことを求めています。
- 分別解体等の方法
- 解体工事に要する費用
- 再資源化等をするための施設の名称と所在地
- 再資源化等に要する費用
つまり「壊す費用」と「出たゴミを再資源化する費用」は契約書で分けて書かれるのが決まりで、廃材をどこの施設に持ち込むかも書かれます。見積もりの段階でこの2つが分かれていれば、業者どうしの比較もしやすくなります。
また同法12条で、元請になろうとする業者は、契約の前に、届出に書く事項(建物の構造、工事の着手時期と工程、分別解体の計画など)を書面で施主に説明しなければなりません。届出そのものは施主の義務で、着工の7日前までです。
工事のあと:再資源化の完了報告をもらう
建設リサイクル法18条は、元請業者に、廃材の再資源化等が終わったら、その旨を発注者に書面で報告することを義務づけています。報告には、完了した年月日、再資源化をした施設の名称と所在地、かかった費用が書かれます(同法施行規則5条)。工事代金を払ったら終わり、ではなく、この報告書を受け取るまでが工事です。
適正に行われなかったと考えるときは、発注者は都道府県知事に申告できる、とも定められています(同条2項)。
業者の登録・許可を確かめる
解体工事業者は、営業所と解体工事の現場ごとに、商号や登録番号を書いた標識を掲げる決まりです(建設リサイクル法33条。建設業許可を持つ業者は建設業法40条)。登録は5年ごとの更新で、更新を申請している間は、満了日を過ぎても処分が出るまで従前の登録が効力を持つ、とされています(同法21条2項・3項)。
当サイトの福岡県の解体業者一覧は、福岡県の解体工事業者登録名簿をもとに、登録番号と有効期間の満了日を載せています。見積もりをもらった業者の番号を照らし合わせるのに使ってください。
追加請求や不法投棄など、施主がぶつかりやすいトラブルと相談先は解体工事のトラブルを防ぐにはにまとめています。
家の中に残った家具・家電(残置物)は、家庭の場合は一般廃棄物で、解体の前に持ち主が市町村の方法で処分するのが原則です。産業廃棄物の許可だけでは運べません。くわしくは解体前の家財・残置物の処分にまとめています。
業者を選ぶときに確かめること全体は、解体業者の選び方にまとめています。
出どころ:建設業法 第19条・第20条・第40条、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律 第12条・第13条・第18条・第21条・第33条、特定建設資材に係る分別解体等に関する省令 第7条、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律施行規則 第5条、大気汚染防止法 第18条の15(いずれも e-Gov 法令検索)。当サイトが2026年9月26日に確認しました。この記事は法律で決まっている書類の仕組みを説明するもので、個別の契約についての法律相談ではありません。