隣や近所で家の解体工事が始まって、うるさい、家が揺れる、ほこりが飛んでくる、アスベストが心配——そんなときにどこまでが決まりで、どこに相談できるのかを、騒音規制法・振動規制法・大気汚染防止法の条文と環境省の基準で確かめました。
先に結論:困ったときの相談先
| 困っていること | まず | それでも改善しないとき |
|---|---|---|
| うるさい・揺れる | 現場の標識にある解体業者(元請)に伝える | 市区町村の環境(公害・騒音振動)の担当課 |
| ほこり・がれきが飛ぶ | 解体業者に養生・散水を頼む | 市区町村の環境の担当課 |
| アスベストが心配 | 現場に掲示された石綿の事前調査の結果を見る | 県・市の大気汚染(石綿)の担当課 |
| 家や車に傷がついた | 写真を撮り、解体業者に連絡する | 業者の損害賠償保険、施主との話し合い |
いずれも、最初の連絡先は現場の「標識」に書いてある業者です。解体工事業者は、現場ごとに商号・登録番号などを書いた標識を公衆の見やすい場所に掲げる決まりがあります(建設リサイクル法33条。建設業許可を持つ業者は建設業法40条)。
うるさい・揺れる:法律の基準はどうなっているか
騒音規制法と振動規制法は、建設工事のうちとくに大きな音・振動を出す作業を「特定建設作業」と決め、都道府県知事(市の区域は市長)が指定した地域の中で規制しています。
解体で「特定建設作業」になる主な作業
- 騒音:さく岩機を使う作業、原動機の出力が80キロワット以上のバックホウ(低騒音型として国が指定したものを除く)を使う作業 など(騒音規制法施行令 別表第二)
- 振動:ブレーカー(手持ち式を除く)を使う作業、鋼球で建物を壊す作業 など(振動規制法施行令 別表第二)
家の解体では、コンクリートの基礎をブレーカーで壊す作業が振動の特定建設作業に当たることがあります。一方、小型の重機だけで木造の家を壊す場合などは当たらないこともあり、どの解体工事にも同じ規制がかかるわけではありません。
特定建設作業の基準
| 項目 | 騒音 | 振動 |
|---|---|---|
| 大きさ(敷地の境界で) | 85デシベルを超えない | 75デシベルを超えない |
| 作業できない時間 | 住宅地などの区域(第1号区域)は午後7時〜翌朝7時、それ以外の区域(第2号区域)は午後10時〜翌朝6時 | |
| 1日の作業時間 | 第1号区域は1日10時間まで、第2号区域は14時間まで | |
| 連続日数 | 連続6日まで | |
| 日曜・休日 | 作業しない | |
出どころは、騒音が環境省告示「特定建設作業に伴って発生する騒音の規制に関する基準」、振動が振動規制法施行規則の別表第一です。災害時など、例外もあります。
さらに、指定地域で特定建設作業をする業者は、作業を始める7日前までに市町村長へ届け出る義務があります(騒音規制法14条・振動規制法14条)。基準を超えて周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるとき、市町村長は業者に改善を勧告し、従わなければ命令できます(両法15条)。
つまり、夜や日曜に重機やブレーカーの音・振動がする、何日も休みなく続くといった場合は、市区町村の環境の担当課に相談する意味があります。届出が出ているか、指定地域かどうかも、担当課で分かります。
ほこり・アスベスト:現場の「掲示」を見る
大気汚染防止法18条の15は、解体工事の元請業者に、工事の前に石綿(アスベスト)の有無を調べ、その結果を工事の現場で公衆に見やすいように掲示することを義務づけています。調査の記録の写しも現場に備え置かなければなりません。
近所の人がまず確かめられるのは、この掲示です。
- 石綿が「なし」と書かれていれば、通常の解体工事です
- 石綿が「あり」なら、除去の作業の種類・期間・方法が決まっていて、飛散を防ぐ措置をとって進めることになります
- 掲示が見当たらないときは、業者に尋ね、それでも分からなければ県や市の担当課に相談してください
石綿の事前調査の仕組みは解体前のアスベスト調査は義務にまとめています。
揺れで家にひびが入った・車に傷がついた
- すぐに写真を撮る:日付が分かる形で、傷やひびの場所と全体を撮っておきます
- 解体業者(元請)に連絡する:標識に書かれた会社です。業者が損害賠償保険に入っていれば、保険で対応することがあります
- 施主にも伝える:工事を頼んだのは施主なので、話し合いの相手になります
工事の前から気になるなら、着工前の家の状態(外壁のひびなど)を写真に残しておくと、あとで工事による傷かどうかを話し合いやすくなります。業者によっては、工事の前に近隣の家の状態を一緒に確認することもあります。
解体工事の標識・お知らせに書くこと
現場には、法律で掲げることが決まっているものと、業者や施主が近所に配るお知らせがあります。
法律で掲げるもの
- 解体工事業者の標識:商号・名称、登録番号、登録年月日、法人なら代表者の氏名、技術管理者の氏名(建設リサイクル法33条、解体工事業に係る登録等に関する省令8条)。建設業許可を持つ業者は、建設業法40条の標識を掲げます
- 石綿(アスベスト)の事前調査の結果(大気汚染防止法18条の15)
標識の登録番号は、当サイトの福岡県の解体業者一覧で照らし合わせられます。
近所へのお知らせに書くこと
お知らせの書き方は法律で決まっていませんが、着工の前に次のことが伝わっていれば、近所の人が困ったときに連絡できます。
- 工事の場所と、壊す建物
- 工期(始まる日と終わる予定の日)と、作業する時間帯・休む日
- 重機を使う、基礎を壊すなど、音や振動が大きくなる時期
- 解体業者の名前・登録番号・連絡先と、現場の責任者
- 石綿の有無と、ある場合の対策
- 施主の名前(書くかどうかは施主が決めます)
近所の側からすると、お知らせに連絡先が書いてあれば、まずそこへ、なければ現場の標識の業者へ連絡します。
自分が「壊す側」になるときに
近所の立場で困ったことは、自分が家を解体するときに気をつけるべきことでもあります。
- 着工前に近所へあいさつ:工期・作業時間・連絡先を伝えておくと、苦情が大きくなりにくくなります
- 損害賠償保険に入っているかを業者に聞く:公式サイトに加入を書いている解体業者は少なく、当サイトで確かめられたのはまだ1社です(損害賠償保険に加入している解体業者)。見積もりのときに直接聞いてください
- 石綿の事前調査と掲示、建設リサイクル法の届出など、法律の手続きを業者と一緒に確かめる(解体の見積書・契約書で確かめること)
当サイトは、福岡県の解体工事業者登録名簿をもとに、福岡県の解体業者を登録番号つきで一覧にしています。現場の標識に書かれた登録番号を照らし合わせることもできます。
追加請求や不法投棄など、施主がぶつかりやすいトラブルと相談先は解体工事のトラブルを防ぐにはにまとめています。
隣との境にあるブロック塀は、法律上は両家の共有と推定されます。壊す前に境のブロック塀を壊すときの注意を確かめてください。
現場に掲げる看板(登録票・許可票・石綿の掲示)の中身と大きさ、看板がない現場の相談先は解体工事の看板(標識)は3種類にまとめています。
出どころ:騒音規制法 第2条・第3条・第14条・第15条、騒音規制法施行令 別表第二、振動規制法 第14条・第15条、振動規制法施行令 別表第二、振動規制法施行規則 別表第一、大気汚染防止法 第18条の15、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律 第33条、建設業法 第40条、解体工事業に係る登録等に関する省令 第8条(いずれも e-Gov 法令検索)、環境省告示「特定建設作業に伴って発生する騒音の規制に関する基準」。当サイトが2026年9月26日に確認しました。規制の区域や相談窓口は市町村によって違います。この記事は制度の説明で、個別のトラブルについての法律相談ではありません。