家を壊して土地を売ると、売れたお金に税金(譲渡所得税)がかかることがあります。このとき解体費用は「譲渡費用」として、売れた金額から差し引けます。国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在の法令等)で、差し引ける条件と計算のしかたを確かめました。
結論:売るために壊した費用は、売却額から差し引ける
国税庁は「譲渡費用となるもの」(タックスアンサー No.3255)の1つとして、次のものを挙げています。
土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
ポイントは2つです。
- 「売るために」壊したことが条件です。譲渡費用とは「土地や建物を売るために直接かかった費用」で、修繕費や固定資産税のような維持・管理の費用は含まれません
- 解体業者に払った取壊し費用に加えて、取り壊した建物の損失額も譲渡費用になります
計算のしかた
土地や建物を売ったときの利益(譲渡所得)は、次の式で計算します(No.3202・No.3208)。
課税される譲渡所得 = 売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 売った金額 | 土地の売却代金 |
| 取得費 | その土地を買ったときの代金など。分からなければ売った金額の5%にできる(No.3258) |
| 譲渡費用 | 仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、建物の取壊し費用など |
| 特別控除 | 通常はなし。条件を満たせば、相続した空き家の特例(最大3,000万円)などが使える |
税率は、売った年の1月1日時点で持っていた期間が5年を超えるかで変わります(相続した土地は、亡くなった人が取得した日から数えます)。
- 5年を超える(長期):所得税15%・住民税5%(No.3208)
- 5年以下(短期):所得税30%・住民税9%(No.3211)
このほか、復興特別所得税(所得税額の2.1%)も所得税とあわせて納めます。
計算してみる:親から相続した土地を売る場合
数字はすべて説明のための仮のものです。親が何十年も前に買った土地で、いくらで買ったか記録が残っていない、というよくある場面で考えます。
- 土地の売却額:1,500万円
- 取得費:記録がないので売却額の5% = 75万円
- 譲渡費用:解体費用 150万円 + 仲介手数料など 55万円 = 205万円
- 特別控除:使わない場合
| 解体費用を差し引く | 差し引き忘れた場合 | |
|---|---|---|
| 課税される譲渡所得 | 1,500 − (75 + 205) = 1,220万円 | 1,500 − (75 + 55) = 1,370万円 |
| 所得税15%+住民税5% | 約244万円 | 約274万円 |
この例では、解体費用150万円を差し引くかどうかで税金が約30万円変わります(150万円 × 20%。復興特別所得税を除いた概算)。取得費が5%しか認められない古い土地ほど、解体費用の差し引きが効きます。
相続した空き家なら、特別控除と両方使える
親が一人で住んでいた家を相続し、壊して更地にしてから売ると、条件しだいで譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります(被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例、No.3306)。
上の計算式のとおり、解体費用(譲渡費用)を差し引いたあとに、さらに特別控除を差し引くので、両方使えます。主な条件は次のとおりです。
- 家が昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられたもので、区分所有の登記(マンションなど)ではないこと
- 亡くなる直前に、亡くなった人以外に住んでいた人がいなかったこと(老人ホームに入所していた場合の例外あり)
- 相続から壊すまで、また相続から売るまで、事業・貸付け・居住に使っていないこと
- 壊してから売るまで、建物や構築物の敷地に使っていないこと
- 相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。かつ2027年12月31日までの売却であること
- 売却代金が1億円以下であること
- 親子・夫婦など特別の関係がある人に売ったものでないこと
- 市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受け、確定申告で出すこと
注意:相続人が3人以上だと上限が2,000万円になります(2024年1月1日以後の売却で、家と敷地を相続した相続人が3人以上の場合)。兄弟3人で相続した実家を売るときは、ここを見落とさないでください。
また2024年1月1日以後の売却では、家を建てたまま売り、売った年の翌年2月15日までに取り壊された場合も対象になりました。売主が先に壊すかどうかは、解体の見積もりと売却の条件を並べて決められます。
申告のときに要るもの
- 確定申告書と「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]」
- 解体費用を差し引くなら、解体業者の請求書・領収書(取壊し費用を示す書類)を保管しておく
- 空き家の特例を使うなら、登記事項証明書、市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」、売買契約書の写しなど
解体業者には、「解体工事一式」だけでなく内訳の入った見積書・請求書を出してもらってください。申告のときに何の費用かを説明しやすくなります。
自分で住んでいた家を壊して売る場合
相続した空き家ではなく、自分が住んでいた家を壊して土地を売る場合は、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」(No.3302)が使えることがあります。この場合は、壊した日から1年以内に売買契約を結び、かつ住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、壊してから契約までその土地を貸駐車場などに使っていないことが条件です。
売る前にやること
- 相続した家なら、いつ建てられたか(昭和56年5月31日以前か)を登記事項証明書で確かめる
- 解体業者から内訳つきの見積もりを取る(福岡県の解体業者一覧、目安は坪数別の費用早見表)
- 市町村の解体の補助金が使えるか確かめる。契約・着工の前の申請が必要です(福岡県の解体の補助金一覧)
- 空き家の特例を使うなら、壊したあと売るまで駐車場などに使わない
- 売った翌年に確定申告をする
相続人が複数いる場合の費用の分け方は実家の解体費用は誰が払う?、壊す前の固定資産税の話は空き家を解体すると固定資産税が6倍?にまとめています。
解体が終わったら、取り壊した日から1か月以内に建物滅失登記を申請します。手順と福岡県内の提出先は建物滅失登記の手順と必要書類にまとめています。
会社や賃貸業の建物を壊したとき、建物つきの土地を買ってすぐ壊したときの扱い(勘定科目・損金・土地の取得価額)は、解体費用の勘定科目と税金の扱いにまとめています。
相続税との関係(解体費用は相続税から引けるか、いつ壊すと小規模宅地等の特例に影響するか)は、相続した家の解体費用は相続税から引ける?にまとめています。
更地にして売るか、建物付き(古家付き)のまま売るか、更地にしたあと地中から基礎などが出てきたときの売主の責任は、更地にして売る?古家付きで売る?にまとめています。
出どころ:国税庁タックスアンサー No.3255「譲渡費用となるもの」、No.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」、No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」、No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」、No.3258「取得費が分からないとき」、No.3302「マイホームを売ったときの特例」、No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(いずれも令和8年4月1日現在法令等)。当サイトが2026年9月26日に確認しました。計算例の数字は説明のための仮のものです。この記事は税金の仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。実際の申告は、税務署や税理士にご確認ください。