分譲マンションは、1つの建物を多くの人が区分して持っています(区分所有)。一戸建てと違って、1人の判断では壊せません。この記事では、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)の条文をもとに、マンションを解体するときの決め方と、費用を誰がどう負担するかを整理します。2026年4月1日から、建て替えずに取り壊すだけの「取壊し決議」が新しくできました(令和7年法律第47号による改正。法務省によると、区分所有法の改正部分の施行日は令和8年4月1日)。
結論:費用は区分所有者が、決議で決めた分担で負担する
マンションを取り壊す決議では、取壊しに要する費用の概算額と、その費用の分担に関する事項を必ず決めます(区分所有法64条の8第2項)。分担は各区分所有者の衡平を害しないように定めなければなりません(同条3項で準用する62条5項)。つまり、解体費用を払うのは区分所有者で、その割り振りは集会の決議で決まります。
マンションを解体するための4つの決議
| 決議 | 何を決めるか | 必要な賛成 |
|---|---|---|
| 建替え決議(62条) | 取り壊して、同じ敷地などに新しい建物を建てる | 区分所有者と議決権の各5分の4以上 |
| 取壊し決議(64条の8) | 建て替えずに取り壊す(2026年4月から) | 区分所有者と議決権の各5分の4以上 |
| 建物取壊し敷地売却決議(64条の7) | 取り壊して、敷地を売る | 区分所有者・議決権・敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上 |
| 建物敷地売却決議(64条の6) | 建物と敷地をまとめて売る | 区分所有者・議決権・敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上 |
古いマンションは「4分の3」で決められる場合がある
建物が次のどれかに当たるときは、建替え決議の「5分の4」が「4分の3」になります(62条2項)。この規定は取壊し決議にも準用されます(64条の8第3項)。
- 地震に対する安全性の基準に適合していない
- 火災に対する安全性の基準に適合していない
- 外壁・外装材などがはがれて落ち、周りに危害を与えるおそれがある
- 給水・排水などの配管の劣化で、著しく衛生上有害となるおそれがある
- 高齢者・障害者などの移動の円滑化の基準に適合していない
それぞれの基準は法務大臣が定めます(62条2項・3項)。自分のマンションが当たるかは、管理組合と専門家で確かめることになります。
決議までの手続き
- 集会の招集の通知は、集会の日より少なくとも2か月前に出します(62条6項。取壊し決議にも準用)
- 決議のあと、賛成しなかった区分所有者には、取壊しに参加するかどうかを回答するよう書面で催告します。催告を受けた人は2か月以内に回答し、回答しなければ参加しないと回答したものとみなされます(63条1項〜4項)
- 参加しない人に対しては、賛成した人などが区分所有権と敷地利用権を時価で売り渡すよう請求できます(63条5項)。明け渡しで生活に著しい困難が生じるおそれがあるなどの場合は、裁判所が1年を超えない範囲で明け渡しの期限を認めることがあります(同条6項)
- 決議から2年以内に取壊し工事に着手しないと、売り渡した人が買い戻しを請求できる場合があります(同条7項)
部屋を貸している場合:賃借人の扱い
決議があると、賃貸されている部屋の賃借人に対して賃貸借の終了を請求できます。請求から6か月で賃貸借は終わり、その部屋の区分所有者は、賃貸借の終了によって通常生ずる損失の補償金を賃借人に支払わなければなりません(64条の2。取壊し決議にも準用)。建物全体を1人で持つアパートの立ち退きとは仕組みが違います(アパートの場合はアパートを解体するとき)。
解体工事そのものの注意
- マンションは鉄筋コンクリート造などの非木造が多く、延べ床も大きいので、請負金額が500万円以上になれば建設業の許可を持つ業者が必要です(解体工事業の登録とは)
- 福岡市の資料によると、吹付けアスベストはマンションの駐車場や機械室などに使われている可能性があります。解体前の石綿の事前調査は義務です(解体前のアスベスト調査は義務)。なお、福岡市・北九州市の吹付けアスベストの補助は、解体を予定している建物は対象外です(アスベストの補助金は解体に使える?)
- 公的に公表されている非木造の解体の単価は解体工事の単価表にまとめています(補助金の算定基準で、実際の見積もりの額ではありません)
出どころ:建物の区分所有等に関する法律 第62条・第63条・第64条の2・第64条の6・第64条の7・第64条の8(e-Gov 法令検索。令和7年法律第47号による改正後)、法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」(区分所有法の改正部分は令和8年4月1日施行)、福岡市「福岡市民間建築物吹付けアスベスト除去等対策事業のご案内」。当サイトが2026年9月27日に確認しました。この記事は条文の一般的な説明で、個別の法律相談ではありません。実際の決議や手続きは、管理組合と弁護士などの専門家にご相談ください。