土地は地主から借りていて、建物は自分(や親)のもの。そんな借地の家を解体するとき、費用を払うのは誰でしょうか。答えは「借地の契約がどう終わるか」で変わります。この記事では、民法と借地借家法の条文をもとに、場面ごとに整理します。
まず結論:場面ごとの早見表
| 場面 | 解体するのは | 根拠 |
|---|---|---|
| 借地の契約が終わり、土地を返す(原則) | 建物の持ち主(借地人)が建物を取り除いて返す | 民法622条(599条1項を準用) |
| 期間が満了し、契約が更新されない | 借地人は、地主に建物を時価で買い取るよう請求できる(買い取られれば、解体するかは地主が決める) | 借地借家法13条 |
| 定期借地権(50年以上)で、買取請求をしない特約がある | 借地人が取り除いて返す | 借地借家法22条 |
| 家を借りている(借家) | 建物の持ち主(大家)。借りている人は建物の持ち主ではない | — |
「借地」は、建物を持つために土地を借りる権利(借地権)のことです(借地借家法2条1号)。家そのものを借りる「借家」とは別の話なので、最初にどちらかを確かめてください。
大家として貸しているアパートを取り壊すときは、入居者の立ち退きの決まり(借地借家法26〜28条)がかかわります。アパートを解体するときにまとめています。
原則:土地を返すときは、借地人が建物を取り除く
民法は、借りた物に自分で取り付けた物があるときは、契約が終わったら借りた人がそれを取り除く義務を負うと定めています(599条1項)。この規定は土地の賃貸借にも準用されます(622条)。借地の上の建物は借地人が建てた(または相続した)ものなので、土地を返すときは、借地人が建物を解体して更地に戻すのが原則です。解体費用も、原則は借地人の負担になります。
建物は借地人の財産です。地主の側から見ても、話し合いや手続きを経ずに勝手に壊すことはできません。
期間満了で更新しないなら「建物買取請求」
借地借家法は、借地権の存続期間が満了した場合に、契約の更新がないときは、借地人が地主に対して、建物などを時価で買い取るよう請求できると定めています(13条1項)。買い取られれば建物は地主のものになるので、借地人が解体費用を払う必要はありません。
- この権利が定められているのは、条文のとおり「存続期間が満了し、更新がない」場面です。途中で合意して解約する場合などは、この条文の場面そのものではないので、費用の分担は話し合いで決めることになります
- 期間の途中で、地主の承諾を得ずに残りの期間を超えて使う建物を新しく建てていた場合は、裁判所が地主のために代金の支払いを待つ期限を認めることがあります(13条2項)
- 借地上の建物を第三者が取得し、地主が借地権の譲渡を承諾しないときは、その第三者が買取を請求できます(14条)
そもそも、借地は更新できることが多い
建物があるかぎり、借地人が更新を請求すれば、前と同じ条件で更新したものとみなされます(5条1項)。期間が満了したあとも土地を使い続けていれば同じです(5条2項)。地主がこれに異議を述べるには、双方が土地を必要とする事情や、立退料などの申し出を考えたうえで正当の事由が要ります(6条)。
つまり、「借地の期間が来たから、自分の負担で必ず解体して返さなければならない」とは限りません。住み続ける・更新する・買い取ってもらう・自分で解体して返すのどれにするかを、地主と話し合って決めることになります。
定期借地権なら、解体して返す前提
存続期間を50年以上とする借地では、更新しない・建物の買取請求をしないという特約を結べます(22条。公正証書などの書面が要る)。事業用の建物に限った定期借地(23条)も同じく買取請求をしない形にできます。こうした契約なら、期間が終わったときに借地人が解体して更地で返すのが前提です。契約書に「定期借地権」「更新がない」「買取請求をしない」と書かれていないかを確かめてください。
古い借地(借地借家法の施行前の契約)の注意
借地借家法は、施行前に生じたことにも原則として適用されますが(附則4条)、施行前に設定された借地権の契約の更新については、前の借地法の例によるとされています(附則6条)。親の代から続く古い借地では、更新の扱いが今の法律と違うことがあります。契約書の日付を確かめ、迷ったら専門家に相談してください。
解体すると決めたら、進める順番
- 契約書を確かめる:普通の借地か定期借地か、期間、返すときの約束(更地にするか)
- 地主と話し合う:更新するのか、買い取ってもらうのか、解体して返すのか。解体するなら費用の分担・いつまでに・どこまで更地にするかを決めて、書面に残す
- 解体業者に見積もりを取る:借地であること、地主との約束(ブロック塀や樹木まで取るか等)を伝える。見積書の見方は解体の見積書・契約書で確かめること
- 解体後の手続き:建物の持ち主が1か月以内に建物滅失登記を申請する(建物滅失登記の手順)
借地上の空き家でも市町村の補助が使えるかは、市町村の要綱しだいです。福岡県の解体の補助金一覧で制度を確かめ、申し込む前に窓口で借地であることを伝えて相談してください。親から借地上の家を相続した場合の費用の分け方は実家の解体費用は誰が払う?もあわせてどうぞ。
出どころ:民法 第599条・第622条、借地借家法 第2条・第5条・第6条・第13条・第14条・第22条・第23条、同法 附則第4条・第6条(いずれも e-Gov 法令検索)。当サイトが2026年9月27日に確認しました。この記事は条文の一般的な説明で、個別の法律相談ではありません。地主との交渉や契約の解釈は、弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。