アパートを解体するとき|入居者の立ち退き(借地借家法)・解体費用の目安・固定資産税の注意

費用・補助金

古くなったアパートを取り壊して、建て替えたり土地を売ったりするとき、ふつうの家の解体と違うのは入居者の立ち退きと建物の大きさです。この記事では、借地借家法と地方税法の条文、公的に公表された解体の単価をもとに、アパートを解体するまでの順番と注意点をまとめます。

まず全体の順番

  1. 賃貸借契約の種類を確かめる(普通の借家か、定期借家か)
  2. 入居者に通知し、明け渡してもらう(普通の借家なら正当の事由が要る)
  3. 解体業者から見積もりを取る(石綿の事前調査も)
  4. 着工の7日前までに建設リサイクル法の届出(延べ床80㎡以上。アパートはほぼ当てはまる)
  5. 解体し、1か月以内に建物滅失登記

いちばん時間がかかるのは2の立ち退きです。解体の工事よりずっと前から準備が要ります。

入居者の立ち退き:契約の種類で大きく違う

契約の種類 終わらせ方 根拠
普通の借家(期間の定めあり) 期間満了の1年前から6か月前までに「更新しない」と通知する。通知しなければ同じ条件で更新したものとみなされる。通知には正当の事由が要る 借地借家法26条1項・28条
普通の借家(期間の定めなし) 大家が解約を申し入れてから6か月で終わる。申し入れには正当の事由が要る 借地借家法27条1項・28条
定期借家 期間の満了で終わり、更新はない。期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに「期間の満了で終わる」と通知する 借地借家法38条

期間を過ぎても入居者が住み続け、大家が遅れずに異議を述べなければ、やはり更新したものとみなされます(26条2項)。

「正当の事由」は何で決まるか

普通の借家で大家から契約を終わらせるには、正当の事由が要ります。条文は、次のことを考えて判断すると定めています(28条)。

  • 大家と入居者の、それぞれが建物を使う必要性
  • これまでの賃貸借の経過
  • 建物の利用状況と、建物の現況(老朽化の程度など)
  • 大家が明け渡しの条件として、またはそれと引き換えに財産上の給付(いわゆる立退料)を申し出たか

「古いから壊したい」だけで必ず認められるわけではなく、立退料の申し出も含めて総合的に見られます。立退料の額に法律上の決まりはありません。入居者に不利な特約は無効になるので(30条)、契約書に「大家はいつでも解約できる」と書いてあっても、この条文より優先はしません。

定期借家なら、あらかじめ説明が済んでいることが前提

定期借家は、公正証書などの書面で契約し、契約の前に「更新がなく期間の満了で終わる」ことを書面を渡して説明していることが条件です。説明をしていなかった場合、「更新がない」という定めは無効になります(38条1項・3項・5項)。解体を考えて定期借家に切り替えるなら、手続きを専門家と確かめてください。

解体費用の目安(公的に公表された単価で計算)

アパートは戸建てより延べ床が大きく、軽量鉄骨造や鉄骨造も多いので、費用は大きくなります。下の表は、公的に公表された1㎡あたりの基準単価に延べ床を掛けただけの目安です。補助金の算定に使う基準で、実際の見積もりの額ではありません。

延べ床 木造・重機で解体(15,000円/㎡) 非木造(19,000円/㎡) 非木造・機械解体が難しい(31,000円/㎡)
150㎡(約45坪) 約225万円 約285万円 約465万円
200㎡(約60坪) 約300万円 約380万円 約620万円
300㎡(約91坪) 約450万円 約570万円 約930万円

木造の単価は北九州市、非木造の単価は芦屋町が補助金の算定のために公表しているものです(2026年度)。単価の出どころと、国の除却工事費の上限などは解体工事の単価表にまとめています。付帯工事(ブロック塀・駐車場の舗装・物置など)、石綿の除去、地中の埋設物は入っていません。

請負金額が500万円以上になると、解体工事業の登録だけでは請けられず、建設業の許可が要ります。大きなアパートでは、見積もりを頼む業者が許可を持っているかも確かめてください(解体工事業の登録とは)。

固定資産税:アパートの土地は特例の効き方が大きい

人が住む家の敷地(住宅用地)は、固定資産税の課税標準が軽くなる特例があります(地方税法349条の3の2)。

  • 住宅用地は、課税標準が価格の3分の1
  • そのうち「小規模住宅用地」は6分の1。小規模住宅用地は200㎡×住居の数までの部分です

つまりアパートは、戸数が多いほど6分の1になる面積が広くなります。たとえば6戸なら1,200㎡までが小規模住宅用地の枠です。建物を取り壊すと、この特例がなくなります。固定資産税は1月1日の状態で決まるので、取り壊す時期によって翌年度の税額が変わります。しくみは空き家を解体すると固定資産税が6倍?をご覧ください。

補助金は使えるか

福岡県内の市町村の解体の補助は、市町村ごとに対象の建物が違います。たとえば福岡市などの耐震の補助の中の除却枠は木造の戸建て住宅が対象なので、アパートには使えません。空き家の解体の補助で共同住宅が対象になるかは、市町村の要綱しだいです。福岡県の解体の補助金一覧で制度を確かめ、窓口で「アパート(共同住宅)」であることを伝えて相談してください。

税金の扱い(事業として貸している場合)

アパートを建て替えるために取り壊したとき、取り壊した建物の帳簿価額などをどう扱うかは、国税庁の通達に考え方があります。解体費用の勘定科目と税金の扱いにまとめていますが、個別の処理は税理士か税務署に確かめてください。

分譲マンション(区分所有)を取り壊す場合は、区分所有法の決議(2026年4月からの取壊し決議など)で決めます。マンションを解体する費用は誰が払う?をご覧ください。

出どころ:借地借家法 第26条・第27条・第28条・第30条・第38条、地方税法 第349条の3の2(いずれも e-Gov 法令検索)。解体の単価は北九州市「老朽空き家等除却促進事業」の面積基準単価、芦屋町「老朽危険家屋等解体補助金」の基準額単価(当サイトの単価表を参照)。当サイトが2026年9月27日に確認しました。この記事は条文の一般的な説明で、個別の法律相談・税務相談ではありません。入居者との交渉は弁護士などの専門家にご相談ください。

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