古い家が建った土地を売るとき、「解体して更地で売るか」「建物付き(古家付き)のまま売るか」で迷う人は多いはずです。この記事では、売買の条件としての「更地渡し」と「現況渡し」の違い、解体費用と税金、更地にしたあとで起きやすいトラブルを、民法・地方税法の条文と国税庁の説明をもとに整理します。
「更地渡し」と「現況渡し」は、売買契約で決める条件
「更地渡し」「現況渡し」は法律で定められた言葉ではなく、売買契約で決める引き渡しの条件です。
| 引き渡し方 | 中身 | 解体の費用と手間 |
|---|---|---|
| 更地渡し | 売主が建物を取り壊し、更地にして引き渡す | 売主が取り壊して引き渡す約束なので、売主が業者を手配する(費用の持ち方は契約で決める) |
| 現況渡し(古家付き) | 建物が建ったまま引き渡す | 壊すかどうか・その費用は、買主の側で考える |
どちらにするか、解体費用をどちらが持つか、どこまで取り除くか(基礎・ブロック塀・庭木・浄化槽など)は、すべて契約で決めることです。不動産会社と相談のうえ、契約書に書いてもらってください。
税金:いつ壊すかで変わるもの
固定資産税は1月1日の状態で決まる
固定資産税は、その年の1月1日の状態で課税されます(地方税法359条)。住宅が建っている土地は、住宅用地の特例で課税標準が軽くなっています(小規模住宅用地は6分の1、それ以外の住宅用地は3分の1。同法349条の3の2)。年内に解体して更地のまま1月1日を迎えると、翌年度から特例がなくなります。売却が年をまたぎそうなら、解体の時期も含めて考えてください。仕組みは空き家を解体すると固定資産税が6倍?にまとめています。
解体費用は「譲渡費用」になる
土地を売るために建物を取り壊した費用は、売ったときの譲渡所得の計算で譲渡費用として差し引けます(国税庁 No.3255)。更地渡しで売主が解体したなら、その費用は売主の譲渡費用です。詳しくは家を解体して土地を売るとき、解体費用は税金で差し引ける?をご覧ください。
相続した空き家なら、建物付きで売っても3,000万円控除の対象になりうる
相続した空き家を売るときの特別控除(最高3,000万円。相続人が3人以上なら2,000万円)は、国税庁の説明では、令和6年1月1日以後の売却なら、建物付きのまま売って、売った年の翌年2月15日までに建物の取壊し等が行われた場合も対象になります(No.3306。昭和56年5月31日以前の建築などほかの条件もあります)。「売主が先に壊さないと特例が使えない」とは限りません。
更地にしたあと起きやすいトラブル:地中から出てくるもの
更地渡しで売ったあと、買主が工事を始めてから古い基礎・浄化槽・井戸・がれきなどが地中から見つかることがあります。
民法では、引き渡した物が契約の内容に適合しないとき、買主は売主に対して、修補などの追完(562条)、代金の減額(563条)、損害賠償や解除(564条)を求めることができます。買主がその不適合を知った時から1年以内に通知すれば権利が保たれます(566条。売主が引き渡しの時に知っていた、または重大な過失で知らなかったときは期間の制限がかかりません)。「責任を負わない」という特約を結んでいても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れません(572条)。
どういう状態なら「契約の内容に適合しない」かは、契約の内容しだいです。売主としてできることは、次の3つです。
- 解体の見積もり・契約で、どこまで撤去するかを書いてもらう(基礎・地中の配管・浄化槽・ブロック塀など)。書き方は解体の見積書・契約書で確かめること
- 知っていることは売買契約の前に買主へ伝える(昔の井戸、浄化槽、増築の跡など)
- 工事の完了報告と写真を受け取り、売買のときに渡せるようにしておく
更地にしたら必ずやること
- 建物滅失登記:取り壊してから1か月以内に申請します(不動産登記法57条)。手順は建物滅失登記の手順
- 電気・ガス・水道・電話の撤去の連絡は、解体の前に済ませます(家を解体するときの手続き一覧)
どちらで売るかを決める前に
- 解体費用の目安を知る:家の解体費用は坪数でいくら?
- 市町村の補助金が使えるか確かめる(交付決定の前に契約・着工すると受けられない):福岡県の解体の補助金一覧
- 解体を頼むなら、県の登録番号と有効期限を確かめる:福岡県の解体業者一覧
出どころ:民法 第562条・第563条・第564条・第566条・第572条、地方税法 第349条の3の2・第359条、不動産登記法 第57条(いずれも e-Gov 法令検索)、国税庁タックスアンサー No.3255「譲渡費用となるもの」、No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等)。当サイトが2026年9月27日に確認しました。この記事は制度の一般的な説明で、個別の法律相談・税務相談ではありません。売買契約の内容は不動産会社や専門家にご相談ください。